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会報14-4 わたしの部屋 中央アジアを歩く旅

森 正 昭 [平成18年(2006)09月30日発行会報第14号から]

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羊飼い・ザクサウールの林

中央アジアのトルクメニスタン・ウズベキスタン・カザフスタン一帯は、雨が少ない乾燥地帯で、ステップまたは砂漠が広がっている。

私は学生時代のワンゲル仲間とロンドンから東京に向けて歩く旅を 10 年前より続け、交代で歩きながらトレースを東へ延ばしてきた。そして、2002 年から 2004 年にかけて、この地域の一部を歩いた。

トルクメニスタンとウズベキスタンの砂漠地帯は、年間降水量は数十 mm と言われている。砂漠というと、すぐに童謡の「月の砂漠」を思い出す。しかし実際に歩いて見ると、この一帯では、砂丘が続くような場所は皆無に近く、石がごろごろした礫砂漠か、土で覆われた土漠となっている。トルクメニスタンでは乾燥に強いザクサウールという木が多数見られた。葉は長さ 10cm 位の袋状となっており、高さ数mになる。ガイドの話では根は 30mから 100mに達するという。100mには?が伴うが、地下水脈まで根を伸ばしているのだろう。この荒野では、羊やラクダを追う牧童に出会うくらいだ。

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ウズベキスタンに入ると、綿花や小麦、ブドウの畑が広がっている。ヒンヅークシ山脈に源を発するアムダリア河からの灌漑水を利用して、ソ連時代に広大な農地を生み出した。私が歩いた秋の時期には、それこそ国民総出で綿花摘みをしていた。

最近ではこの灌漑水が岩塩層を溶かし塩害を起こしていると聞いたし、二つの大河が流入するアラル海は、灌漑により水が奪われ1/3 程度の面積に縮小、漁業は壊滅しという。

昔、シルクロードの交易で栄えたサマルカンドやブハラは、今もアムダリア河の水によって人々の生活が支えられている。

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カザフスタンは、高原で緯度が北にあることから年間降水量が 400~600mm だが、大部分が草原で大きな木は育たず、国道沿いに植林されたポプラや白樺、柳のような種類しか見られない。

晴天のある朝、直線の道路を歩き始めた。養蜂家のトレーラーが点在する地域を離れると、左は地平線まで原野で右にはポプラの並木が連なっていた。その木々を見ると、丸い鳥の巣が1本の枝に何 10 と連なっている。木が少ないため、鳥の団地となっていた。春にはどんな鳥がここに巣作りするのだろう。

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石ころだらけで緑のない土地や、低木がまばらにしか生えていない地域から日本に戻って、緑を目にすると、なぜか心が安らぐ。恐らく緑豊かな国土に育った血のせいであろう。そして、豊かな自然に恵まれた地に住める幸せに思うと共に、自然に反する開発が後に大きな問題を起こすかもしれないことも記憶すべきであろう。

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