麻生区市民健康の森 ― 麻生鳥のさえずり公園 ―
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会報24-1 麻生多摩美の森に思うこと

(財)川崎市公園緑地協会 公園緑地部長 萩原 哲

[平成21年(2009)03月31日発行会報第24号から]

川崎市の緑地事業にかかわって 20 数年が 経過しましたが、ここ麻生区市民健康の森周 辺とはその当時からのつきあいです。

昭和 63 年に市の自然環境課に配属され、 小沢城址緑地の用地買収で現地の山に入っ たとき、孟宗竹に侵食されアズマネザサで藪 化されて疲弊している雑木林を見て、思わず 怒りにも似た悲しい気持ちになったことが 昨日のように思い出されます。それに比べる と、多摩美の森はまだ手入れの痕跡が残って いて、少し救われた気持ちにもなりました。 そして地権者の協力を得て、新規事業の「ふ れあいの森」第 1 号として指定し、整備する ことができました。

日本タンポポ園西側の土地の開発計画が 持ち上がったころ、その斜面から多摩緑地保 全地区を背景に眺める「多摩美ふれあいの森」のヤマザクラや多摩美公園で遊ぶ子ども たち・・・この風景が好きで、母を連れてお花見をしたことが思い出として残っています。

一方、学校建設用地として川崎市が用地買 収し、計画中断により低未利用地になってい た「市民健康の森」の土地は、長い間放置さ れたことによりアズマネザサが密生し、極めて貧弱な植生状況でした。この場所をその後 に自分が整備するなどとは思っていなかっ ただけに、「市民健康の森」事業で担当した ときは、驚きとともに何か不思議な縁を感じ ました。

また、多摩緑地保全地区は、3番目の緑地 保全地区として指定するため周辺の地権者 に日参したこともありました。当初計画のう ち東側半分は、諸般の事情で指定を断念しま したが、今はそのとき諦めた場所も緑地保全 地区になったことを知って、当時の努力が無 駄ではなかったことに喜びを感じています。

いま思えば、麻生区市民健康の森周辺の緑地は、川崎市における緑地保全のための行政手法の、さながら実験場であったといえます。
○法律による緑地保全地区、都市公園、条例 による緑地協定地。
○土地所得手段として、直接買収、管理換え、 開発による提供、土地交換、借地。
○事業手法として、ふれあいの森事業、市民 健康の森事業・・・というように、次々と、あ らゆる手段・手法を駆使して、やっとの思いでこの場所の緑を残し、また成果を他の地区 に適用してきたことが分かります。

これからは、この残された緑を適切に管理 し、次世代につなげていくことが大切です。 身近な緑に市民が積極的にかかわりを持ち、 行政と一体となって行う管理活動が永続し 発展することを願っております。

(編集部より)川崎市緑政部から公園緑地協会と長年にわたり緑の保全・育成に尽力され た萩原哲会員が3月定年退職を迎えられ、麻生多摩美の森と多摩美ふれあいの森に ハンカ チの木を寄贈・記念植樹をしていただきまし た。今後のご活躍・ご健康をお祈りします。

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