麻生市民館サークル連絡会、川崎市教育委員会麻生市民館が主催し、あさお謡曲研究会が企画運営する公開講座として能楽入門講座を行いました。この講座は今年で5回目になります。講師は従来通り、シテ方金春流能楽師の中村昌弘先生にお願いしました。
650年の歴史を持つ伝統芸能である能楽を楽しく学んでいただき、また所作や謡の体験に加え、能面や装束にも触れて頂いて身近なものに感じて頂きたいとの趣旨で行いました。受講の方々がこれを機会に能舞台に親しんでいただき、ひいては私たちの仲間としてお稽古にも参加して頂ければ幸いです。
当初、定員を20名として募集を行いましたが、想定を大きく上回る応募を頂きました。そのため、2日目を二部制にすることで運営や所作の体験がなんとか可能な人数として、先着40名の方にご参加頂くことにしました。この中には、昨年定員を超えたためにお断りした方々も含まれています。参加できなかった方々へは次回のご案内をお約束いたしました。
講座の内容は次の通りです。
1日目(視聴覚室)
まず室町から戦国、江戸、近代の歴史に沿って、能楽の大きな流れを解説。歴史的背景やその裏に秘められた逸話も。また能の隆盛や危機の歴史も興味ある話題でした。
次に3つの演目の内、多数決で〝船弁慶〟を映写。能舞台のつくり、能の見方、仕舞の見所、シテ、ワキ、地謡、囃子、後見等々の役割、物語の流れなどを解説。この演目には講師のご子息も義経役で出演されていたため、子方の意味合いやその舞台での心温まるエピソードが披露されました。
受講の方々からはたくさんの質問があり、活発な質疑となりました。
2日目(和室)
まず高砂の有名な〝たかさごやー〟の詞章の部分を記号の意味を含めて解説し、同時に縁語、掛詞などの豊かな日本語の特徴的な表現や、能の世界から出て現在使われている表現にも理解が深まりました。先生の指導によって実際に謡いの体験も行い、皆さん大きな声で堂々と謡い切りました。
次に楽器についての説明のあと、能管の洋楽と異なる音階を聞いて頂くことも。
所作ではすり足に始まって、構え、扇の扱いなどを体験。能のいくつかの所作の意味なども実演入りで解説。それにしても目を閉じてのすり足には苦戦。初心者が多かった会員にとっても新鮮な内容が有り、廊下で受講者と同じ動きを。
3日目(和室)
日本の能楽堂の場所の紹介、演目の種類の説明などに始まり、能楽堂で行われたプログラムである「番組」の見方の説明の後、能の鑑賞機会として取り上げた3月12日に行われる金春会定期能で演じられる「葵上」を題材に能のストーリーの流れや言葉の面白さ、面、装束、所作、作り物などについて解説。
会員の一人が彫った11点の能面を展示、解説。最後にご希望のお一人にその面を実際に付ける所作や付けたときの視野の狭さをチラリと実感いただきました。
また、貴重な唐織の能装束を鑑賞いただき、これもご希望の方1名に実際に着ていただきましたがとても感動され大好評でした。
最後に先生が高砂を舞い、最年少の若手が地謡を務め、皆様に能楽のすばらしさを感じていただくことが出来たようでした。
受講者の方々にはこの先生の舞を大変喜んでいただきました。
茶話会
3日目の講座の後、質疑と懇親の機会を設けました。受講された方の半数近くと会員を合わせて約30名の大変盛大な会になりました。質疑ではかなり専門的なものも有り、受講者のレベルの高さに驚かされました。
なお、懇親会に参加されなかった方も含めて多くの方からお稽古の見学希望が有り、この方々の中から新しい仲間が増えればよいと、会員も期待を持ってのお開きとなりました。