熊坂連吟

 
去る5月22日奈良春日野国際フォーラム「甍」で行われた第21回「金春五星会」に参加してきました。今回は金春円満井会法人化30周年記念行事も同時に開催され金春流に係わる多くの人々が参加されました。
そのような金春五星会で発表の機会が我々にも与えられ「あさお謡曲研究会」のメンバーは熊坂を連吟することになりました。
謡を始めて二年目の私にとって能舞台にたつのは昨年の9月に国立能楽堂で行われた「万葉会」に出て以来の二回目となり、まだ袴も充分に身に着けられない状況の身として大変良い経験を致しました。
熊坂については、いままで熊坂長範という大盗賊というイメージしかもっていませんでしたが、この曲を覚える過程で黄金商人三条吉次(金貸し吉次)を襲い、その時吉次と同行していた牛若丸に切り倒されてしまうという事を知りました。
曲の内容は熊坂が吉次を襲った時の有様を再現し、そこにいた小男が牛若丸であることを知らずにさんざん翻弄されついに命を落とすという内容で大変テンポが良く、謡っていて爽快感を感じかつ詩情の溢れる曲でした。しかし我々初心者にとっては約7分という長い曲ですべてを覚えることは非常に厳しい試練でした。
電車の中や寝床でテープを聞きながら、かつ暗ちょこを片手にチラチラ見ながら必死で覚え約一か月近くかかってしまいました。
奈良の五星会で熊坂の連吟を謡ったメンバーは中村昌弘先生門下14人(あさお謡曲研究会9人)でしたが全員が謡曲本を見ずに見事に謡いきりました。
これは皆さんの強い参加意欲と謡いきるという意思の表れだと強く感じました。
前夜の懇親会を兼ねた食事会の後、全員で連吟の練習をした賜物で中村先生門下のチームワークの結束の強さを示すものであると思いました。
今回の奈良旅行は、前日の春日大社若宮拝舎での御社上りの儀式や興福寺南大門跡で行われた薪御能の見学など貴重な体験をする事ができ私にとって益々謡への思いが深まる旅でした。

                                    木田晴夫