麻生市民館サークル連絡会、川崎市教育委員会麻生市民館が主催し、あさお謡曲研究会が企画運営する公開講座として能楽入門講座を行いました。この講座は今年で3回目になります。講師は従来通り、シテ方金春流能楽師の中村昌弘先生にお願いしました。
650年の歴史を持つ伝統芸能である能楽を楽しく学んでいただき、また所作や謡の体験に加え、能面や装束にも触れて頂いて身近なものに感じて頂きたいとの趣旨で行いました。受講の方々がこれを機会に能舞台に親しんでいただき、ひいては私たちの仲間としてお稽古にも参加して頂ければ幸いです。
当初、定員を20名として募集を開始しましたが、多くの応募を頂いたために急遽定員を40名に倍増し、所作、謡の体験を行う2日目は2クラスに分けて行いました。それでも10名の方はお断りせざるを得えませんでした。次の機会には優先的にご参加頂けるよう配慮したいと考えています。
講座の内容は次の通りです。
1日目(視聴覚室)
まず室町から戦国、江戸、近代の歴史に沿って、能楽の大きな流れを解説。歴史的背景やその裏に秘められた逸話も。次に3つの演目の内、多数決で〝胡蝶〟を映写。能舞台のつくり、能の見方、仕舞の見所、シテ、ワキ、地謡、囃子、後見等々の役割、物語の流れ等々を解説。
受講の方々からはたくさんの質問がありました。能と朝廷あるいは幕府との関係、宗教との関わり、流派の違い、また装束の〝小型車2台分の価格〟の具体的数値は?等々。
2日目(和室)
受講者数の枠を広げたため、所作などを行うスペースの関係で2クラスに分けて行いましたが、受講の方々の協力を得てほぼ半数ずつで行うことが出来ました。
まず高砂の有名な〝たかさごやー〟の詞章の部分を節付けの意味を含めて解説し、同時に縁語、掛詞などの豊かな日本語の特徴的な表現にも理解が深まりました。先生の指導によって実際に謡いの体験も行い、皆さん大きな声で堂々と謡い切りました。
次に楽器の説明では能管と小鼓の実演を含めた説明。メンテナンスの違いなども。また、小鼓を打ってみる体験。能管の奇妙な(?)音階を聞いて頂くことも。
所作ではすり足に始まって、構え、扇の扱いなどを体験。能のいくつかの所作の意味なども解説。会員にとっても新鮮な内容が有り、廊下で受講者と同じ動きを。
最後に先生が「羽衣」を舞いました。突然振られましたが、入会後二年弱の会員が中心に地謡を。日ごろの研鑚の成果を披露することになりました。
この日も質問が多く、発声練習は?能で使われる道具は?謡曲研究会では何をするの?謡?仕舞?等々。
扇を開いてみます。思ったより堅いみたいです。
小鼓の実演です。小鼓ってどちらの肩に載せるでしょう?
知っているつもりで、案外間違えて覚えてたりしますね。
先生による、「仕舞 羽衣キリ」 地謡は、当研究会の精鋭??
3日目(和室)
先ず前回の謡の復習からスタート。
週末の18日に矢来能楽堂で行われる円満井会定例能を取り上げ、プログラムである「番組」の見方の説明の後、先生がシテを務める「鵺(ぬえ)」を題材に能のストーリーの流れや言葉の面白さ、面、装束、所作などについて解説。そして650年前の物語が現在にも通じる内容を含んでいることの指摘も新鮮でした。
この日は会員の一人が打った能面を10点展示し、更に製作途中の面2点も紹介。先生から面打ちの難しさ等々についてインタビユーを行ったが、参加した会員も知らなかった内容に目からウロコでした。
その面や装束を付けてみる体験も有り、面の視野の狭さなども実感して頂きました。
講座終了後、受講の方の内、20数名の方が参加して先生を囲んでの追加の質疑や、スタッフとして参加した10名弱の会員とのざっくばらんな意見交換も行いました。講座の場では聞きにくかった質問や稽古の様子などの話題で盛り上がりました。
能舞台の鑑賞
円満井会定例能が10月18日に行われましたが、講座の一環としての能楽鑑賞機会としました。受講者で希望された方6名をはじめ、多くの会員も鑑賞しました。今回は特に盛りだくさんの内容で、時間も12時半から6時までと長時間にわたりました。最後の演目になった先生の「鵺」は動と静、そして哀愁も有り、素晴らしい舞台でした。