さる6月7日(土)、折からの雨の中麻生区のサークル祭が開催され、私たち「あさお謡曲研究会」も「高砂のハイライトを謡う」と題して1年間の稽古の成果の発表を行いました。私も地謡と連吟の1員として参加しましたがその時の感想を遅ればせながら記したいと思います。
当日は生憎の雨のためか例年に比べてお客様は少なかったものの出演者の熱気はすさまじいものがありました。
会員の成果発表は昼の部ベテランの吉崎洋子さんによる「老松」の仕舞で幕を開けました。豊かな声量と重厚な舞は流石と思わせるものがあります。
二番手は入会して僅か半年の真鍋英子さんの仕舞「小鍛冶」です。その軽やかな所作を見ていると半年でこれだけの動きができるのかとただただ感心するばかりでした。終了後の打ち上げで「上がることもなく楽しく舞うことができた」と言われていたのを聴いてこの会に有望な新人が入られたことを痛感し、また頼もしく思いました。
「老松」と「小鍛冶」の地謡はの男性陣の担当で強吟(ごうぎん)らしく力強く謡うことが出来たと思っています。
三番手の平野玲さんの「熊野」の仕舞は長身ながら動きの軽やかさと堂々たる所作、伸びやかな声と共に一昨年暮れに発足した「夕べの会」における研鑽の並並ならないことをうかがわせます。
四番手,築野俊雄さんの「西王母」の仕舞ですが少し細身ですが、三番手の平野さん同様、長身で見栄えも良く1年半のキャリアーとは思えない動きと声量は今後のあさお謡曲研究会を支える方だと思います。
それにしても「夕べの会」メンバーの方々は全員,仕舞の稽古をされているとか、まことに心強いものがあります。
「熊野」、「西王母」の地謡は昼の部、夕べの会の女性全員が担当されましたが多人数にもかかわらず良く声が揃っていたと感心しました。
殿(しんがり)は私たちのエース林静枝さんの「遊行柳」の仕舞です。林さんの静かな所作の中にもメリハリのある動きはこの長丁場の仕舞でもいかんなく発揮されました。加えて客員、永松文子さんを頭とする地謡は昼の部のベテラン女性軍でそれらと相俟って素晴らしい舞が繰り広げられました。
最後は「高砂」の全員による連吟です。冒頭の(今をはじめの)は男性、中盤の(四海波)は昼の部の女性、(高砂や)は夕べの会の女性、最後の(千秋楽)は全員と中村先生の振り分けに従って整然と謡いました。
次いで中村先生による「体験講座」、(高砂のハイライトを謡う)は婚礼の謡いとして有名な(高砂やこの浦舟に、帆をあげて。)の部分を先生のご指導で一節づつ口移しで何回か繰り返しているうちに全員が謡えるようになりました。
講座の最後にプロの能楽師を目指して修行中の河野未有ちゃんの地謡で中村先生の「高砂」の仕舞が披露されました。能楽堂の舞台に劣らぬ迫力に全員がその妙技に酔いしれました。
今回の発表会と体験講座に花を添えたのは一昨年から稽古を共にしている
小林喜久雄さんが自作の「能面」、十数点を出品されたことです。すばらしいご趣味をお持ちの小林さんに感謝いたします。
それにしても、前会長の宮崎さんが企画された「能楽公開講座」を契機に有望な新人が入会されその中から「舞囃子」まで進まれようとされる方がいらっしゃるのは誠に喜ばしいことで大いに楽しみにしています。
(小 川 芳 邦)